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開催報告:地域コーディネーター人材育成研修【沖縄県】

市場ニーズを把握し、販売戦略策定の手法を学ぶ

 2010年11月19日(金)ホテルロイヤルオリオン旺の間で開催された「地域コーディネーター人材育成研修(沖縄県)」には、行政、連携支援機関、大学・研究機関、食品関連事業者、コンサルタントの方々など、日頃食農連携のコーディネート業務に携わる方々にお集まりいただき、生産者側とマーケティング側の其々の立場で連携に取り組まれている講師による、実践に基づいた講義と地元沖縄で地域連携に取り組まれている有識者の方々を交えたパネルディスカッションが行われ、大変有意義な研修の場となりました。

 また、当初の定員50名を超える多くの方から参加の希望を受け、最終的に約70名の方々にご参加いただき、盛況に終わりました。

開会挨拶 14:00〜14:15

内閣府沖縄総合事務局 農林水産部 食品・環境課課長 興儀 仁睦 氏

沖縄研修_興儀仁睦ご挨拶

(内閣府沖縄総合事務局農林水産部
食品・環境課 興儀仁睦 課長)

 開会の挨拶では、最初に、農山漁村の6次産業化を進めることは、所得の向上・地域の雇用の促進という、農山漁村の活性化・地域経済の発展につながり、今後ますます重要になってくることが述べられました。次に、農山漁村の6次産業化や農商工連携を推進していくためには、地域の1次・2次・3次産業が結びつく必要があり、コーディネーターの果たす役割が非常に重要となることから、本研修会参加者が、本日の研修会で得た情報を、今後のコーディネーター業務に活かして活躍することへの期待が述べられました。

講義 14:15〜16:15

テーマ1:
地域資源を利用したブランド化 ⇒配布資料pdf(2.8MB)
講師:
クリアリンクコンサルティング代表 臼井 真美

主な講義内容

沖縄研修_臼井講師

(クリアリンクコンサルティング代表
臼井 真美 氏)

 生産者と食農連携コーディネーターという2つの立場を持つ講師の視点により、ストーリー性を持たせた商品開発を行うとともに、その地域のブランド化を行って町おこしにつなげる手法に関して、事例「B級グルメ厚木シロコロ・ホルモン」、「高座豚手作りハム」等を交えた講義が行われました。

 講義では、最初に、ブランド力を持たせることによる食品業界における優位性を確保する戦略に関して説明がなされ、ブランドを確立するために、食品の高品質化による顧客の信頼を得る方法、地元の人々に親しまれている料理をご当地グルメとして全国に宣伝する方法、製造コスト等が係ることから廃れていた地元の伝統食材を復活させ、それを利用した高級加工品による全国ブランドの確立方法が、事例を交えて紹介されました。

 また、こういったブランドが消費者に受け入れられるためには、単純に商品名の宣伝を行うのではなく、地域興しなどにより食品にストーリー性を持たせることが有効であり、そのためには1者だけが儲ける仕組みではなく、1次・2次・3次産業の連携をはかり、色々な立場の人をどんどん巻き込み、関係者其々が儲けるあるいは納得できる「Win- Win」の関係を構築することの必要性が説明されました。

  • B級グルメ厚木シロコロ・ホルモン:「街おこし」を合言葉に厚木の異業種メンバーが主体となり、地域資源の「シロコロ(豚の大腸)」を利用し、街のブランドを創り上げた事例。
  • 高座豚手作りハム:生産者側である畜産家が主体となり、地域資源の「高座豚」を利用し、地域資源の消費拡大に結びつけた事例。

テーマ2:
市場ウォンツの作り方
 〜機能性食品における市場ウォンツ開発戦略〜 ⇒配布資料pdf(2.8MB)
講師:
株式会社インテグレート 代表取締役CEO 藤田 康人氏

主な講義内容

沖縄研修_藤田講師

(株式会社インテグレート代表取締役CEO
藤田 康人氏)

 一般に認知されていなかったキシリトールに関する機能性等の情報発信による市場喚起を行い、キシリトール・ブームを仕掛けた事例などをもとに、メディア・消費者からの情報収集を基に、企業が届けたいメッセージを世の中が欲しい情報へと形作り、消費者に届けるマーケティング手法に関して講義が行われました。

 講義では、最初に、情報環境の急速な変化により、社会で流通する情報量は、この10年で530倍にも及び、膨大な情報にまぎれ、広告で「言いたいことを伝える」だけでは、消費者には届きづらく、消費者の情報バリアを解きほぐし、購買行動へと導き出すために、消費者を本当に「動かす」マーケティング手法が必要であることが説明されました。

 次に、その手法として、「次世代型IMCマーケティング」による、キシリトールや、スイカに含まれるシトルリンのブーム作成事例などを参考に、素材メーカーが中心となり、素材を利用した商品を開発する製造会社や、素材の機能性等を解明する有識者、消費者の中のオピニオンリーダーなどとのコミュニケーションのとり方、さらにその人たちを巻き込んだマスメディアとのコミュニケーションのとり方、最後の出口である一般消費者とのコミュニケーションのとり方、に関して、判りやすく説明されました。

次世代型IMC(Integrated Marketing Communication)マーケティングとは
消費者やメディアが必要とする情報に対する調査の分析に基づき、綿密な情報シナリオを設計し、メディアを巻き込んで“世の中ごと”にすると共に、消費者が“自分ごと”になる様な情報開発を行う事で、市場の新しいウォンツを創造し、PR、広告、ウェブ、店頭など複合的に組み合わせた情報発信を行う手法です。

パネルディスカッション 16:30〜17:30

テーマ3:
沖縄の地域資源を活用できる市場ニーズの把握、販売戦略の策定まで
コーディネーター:
有限会社開発屋でぃきたん 代表取締役 照屋 隆司氏
パネリスト:
コープおきなわ サポート部 本部長補佐  石原 修氏
クリアリンクコンサルティング 代表  臼井 真美氏
  株式会社赤マルソウ 代表取締役社長  座間味 亮氏
  株式会社渡具知 代表取締役社長  渡具知 豊氏
  株式会社インテグレート 代表取締役 CEO  藤田 康人氏
                                      (五十音順)

 パネルディスカッションは、有限会社開発屋でぃきたん代表取締役照屋隆司氏により司会進行が行われました。

 最初に、地元沖縄で連携に取り組む3人の有識者、コープおきなわサポート部本部長補佐石原修氏、株式会社赤マルソウ代表取締役社長座間味亮氏、有限会社渡具知代表取締役社長渡具知豊氏による取組事例が紹介されました。

  • 事例1: 石原氏 ご紹介
    地域資源を活用した商品開発の成功事例として、未利用資源であった「イカ墨」や「民泊」という沖縄の観光資源を活用した事例が紹介されました。事前の入念なマーケティングによる市場及び関係者のニーズの把握とターゲットの設定の大切さが説明されました。
  • 事例2: 座間味氏 ご紹介
    沖縄の家庭料理であり、大手流通では従来は取り扱っていなかった「油味噌」の瓶詰め商品の開発を行い、利便性を高めることで販売実績を挙げたこと、その後販売数が下降したため、1年ほどかけて、県外の人々へのヒアリング調査を行い、県外向けにネーミングやパッケージ、原材料成分を改良する商品開発を行い、県外市場を開拓した事例が紹介されました。関係者との合意形成のためには、入念な調査によるデータの提示が有効であること、これからは県外市場への進出を視野に入れた経営戦略が重要であることが説明されました。
  • 事例3: 渡具知氏 ご紹介
    生産者からの要望により、地域の農産物であるハバネロやシークワーサーの商品化に取り組み、展示会等で宣伝を行い、関係者からの生の声を時間をかけて収集し、新商品開発に取り組んでいる事例が紹介されました。商品開発にPDCAサイクルを活用することの重要性が説明されました。

 事例を踏まえた議論では、連携を構築することにより、市場をより大きくする可能性があることが示唆され、コーディネーターは民間や一部の関係者だけの連携体を構築するのではなく、行政や流通などの異業種との連携体形成にも取り組むことの必要性が指摘されました。

 一方で、異業種との連携を取ることが難しいとの声も挙がりました。 その対策として、儲けを前面に出すのではなく、地域の課題を解決することにもその連携体で取り組み、さまざまな関係者を巻き込むことが可能であるとの意見が挙がりました。その際注意することとして、リスクは丹念に調べて一つずつ潰し、関係者に安心を保障することが挙げられました。また、相手の立場に立って考え、相手が判り易い説明を丁寧に行い、色々な立場の人が参加し易い体制を作ることも挙がりました。

 販売戦略を立てる際の注意点として、市場規模に応じた戦略をたてること、中心となる人物には方向性や結論は見えていても、入念な調査を行い、データを基にして関係者を説得することが、関係者全員が納得し、共通の認識を持つために必要な事項として挙がりました。

 また、調査を行う際の注意点として、数値化されたデータ解析だけではなく、生の声を聞くこと(ヒアリング)の重要性が指摘されました。

 さらに、宣伝手段としてブログを利用する際の注意点として、たくさんあるその他の情報の中に埋もれてしまわないように、「目立つ」或いは「面白い」、「希少性がある」等の特長を持たせることが挙げられました。

 其々のパネリストが壁にぶつかり、それを乗り越えた経験を活かした活発な議論が行われ、会場でも熱心に聞き入る研修者の方々が多く見受けられるパネルディスカッションとなりました。

沖縄研修_全体

(全体写真)

沖縄研修_パネルディスカッション1

(有限会社開発屋でぃきたん
代表取締役 照屋 隆司氏)

沖縄研修_パネルディスカッション2

(コープおきなわサポート部
本部長補佐 石原 修氏)

沖縄研修_パネルディスカッション3

(株式会社赤マルソウ
代表取締役社長 座間味 亮氏)

沖縄研修_パネルディスカッション4

(有限会社渡具知
代表取締役社長 渡具知 豊氏)

沖縄研修_パネルディスカッション5

(クリアリンク コンサルティング
代表 臼井 真美氏)

沖縄研修_パネルディスカッション6

(株式会社インテグレート
代表取締役 CEO 藤田 康人氏)

参加者からの声

  • 成功例や失敗例、実体験の取り組みなどの具体的な事例紹介があり、有意義な研修であった。
  • コーディネート業務に関して、深いところまで掘り下げた内容で農商工連携だけではなく、それ以外の連携にも活用できる内容で、大変参考になった。
  • 「消費者視点」を持つこと、「行政など関係者の巻き込み」方法等、勉強になった。今後の沖縄の産業活性化に活用できると感じた。
  • 今回の研修を参考に、小規模での情報発信に前向きに取り組んでみたい。
  • 最近売れなくなったと感じていたが、今回の講義で市場の調査・分析が必要であることが判った。
  • 関係者とのWin-Win構築の必要性が判った。
  • 沖縄県の事例紹介もあり、沖縄にも良いものがあるのだと実感した。