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開催報告:
    公開研修(第3回研修)コーディネーター人材育成研修−連続開催【東京】−

考えよう!これからの6次産業化 〜食と農による地域活性化を目指して〜

 東京研修の第3回目にあたる今回の研修は、食をとおした地域活性化に取り組む多くの方々にご参加いただき、知識や見解を広めていただくと共に、情報交換、交流の場としてご活用いただけるよう公開研修とし、150名の参加者を募集しました。先般、国会にて「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」(通称:6次産業化法)が可決され、6次産業化の取り組みに対し注目が集まったこととも重なり、定員を上回る180名近くの方々からお申し込みをいただき、大変盛況な会となりました。

開会挨拶 13:00〜13:10

社団法人 食品需給研究センター 理事長 西藤 久三

公開研修_西藤久三ご挨拶

(社団法人 食品需給研究センター
理事長 西藤 久三)

 開会の挨拶では、健康、安全、簡便化などの消費者の志向ニーズは多様化しており、食料供給における加工流通サービスの役割がますます高まる一方、供給面では、近年の社会変化に対応できず、担い手の高齢化など低迷を続けている。このような中、農業を成長産業として位置づけ、国際化の進展と農業・農村の振興を両立させる施策が模索、展開されてきており、先の臨時国会で、農業・農村の6次産業化法が成立したと述べました。本研修では、新井食品産業企画課長から6次産業化の推進方策について紹介いただくと共に、全国で活躍する食農連携コーディネーター(FACO)4名から具体的な取り組み事例について発表いただくことが紹介されました。

第一部 13:10〜14:00

演 題:
6次産業化の推進について
講 師:
農林水産省総合食料局 食品産業企画課 課長 新井ゆたか

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(新井 ゆたか氏)

 農山漁村の6次産業化の考え方について説明された後、6次産業化法の概要や基本方針、目指すものについて、農商工等連携促進法との違いなどを交え、わかりやすくご説明いただきました。農林漁業者と中小企業者の「双方の経営改善」が目的である農商工等連携促進法に対し、6次産業化法は、「農林漁業の振興及び農山漁村の活性化」等が目的で、農林漁業者等による取り組みが事業計画認定の対象になるということです。

 また、事業の一環として「6次産業化プランナー(仮称)」を各県4、5名(全国230〜240名程度)配置することを計画しており、食農連携コーディネーター(FACO)を含め、今後実際に現場に入り、事業計画を作成できる人の存在がますます重要になるという点が述べられました。農林漁業者は、商品開発の各段階(企画・合意形成→計画作成・申請→新商品の開発→販路の開拓→本格的な事業化)で、様々な課題を抱えており、その悩みに親身に対応するサポート体制が不可欠だということです。

 さらには、これから地域で6次産業化、農商工連携、食農連携等のコーディネートを行う皆さまに期待することとして、@プロダクトアウトだけではなく、マーケットインの視点を導入すること、A多くの人ではなく長く愛好してくれるコアな人をどれだけ掴むことが大切である点、等を生産者に伝えて欲しいといったことが強調されました。地域を元気付けるために、新しい風を入れ、新しい風の中で、新しい発見をし、新しい着眼点を与える立場として活動していただきたいと、地域活性化に向けた想いを熱心にお話いただきました。

第二部  14:00〜17:25

全国で活躍する食農連携コーディネーター(FACO)の取り組み  14:00〜16:55

演 題:
産直、都市農村交流を通じた地域活性化 ⇒講演データpdf(2.3MB)
講 師:
産直新聞 編集長 毛賀澤 明宏

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(毛賀澤 明宏氏)

 長野県で農産物直売所をベースとして地域振興をサポートして来た経験から、農産物直売所・手作り加工所・農家レストラン・農家民宿などを核とする地域資源活用ならびに滞在型観光などによる地域振興のコーディネートを行っている講師より、コーディネーターに求められることについて、ご講演いただきました。

 農産物直売事業を核とした連携事業の創出による地域振興サポートとして、毎月の産直新聞の発行、長野県産直・直売連絡協議会の発足、長野県食農連携戦略構想書の策定、信州直売所学校の開校等、これまでの活動の話をされました。これまで、情報発信・交流、人脈づくり、戦略構想、人材育成、商品開発等、結果的にコーディネートに関する総合的な活動を実施してきた結果、「貧乏暇なし、355日フルタイム、風呂敷残業当然、連続出張多数、電話鳴りっぱなし」と述べられました。中でも、長野県食農連携戦略構想書の策定を行った経験は、「戦略なき地域振興はあり得ない」ということを実感するコーディネートを行う上で重要な気付きが多くあったとのことです。

 これらの経験を踏まえ、6次産業化を推進するコーディネーターに求められることをいくつか提言いただきました。1つ目は、地域農業の振興の問題と向き合わないと意味がないということです。「農業振興」「地域振興」を標榜しながらも、実際には、流通・情報・企画の領域が“潤う”事業がなんと多いことかという指摘です。2つ目は、単なる接着剤=つなぎ役ではないということです。情報をつなぐ、あるいは知人と知人をつなぐだけで何かが生まれることはほとんどなく、ニーズやシーズの掘り起こし・発見・育成、あるいは「やる気」「熱意」の喚起自体が重要になることが多いという指摘です。3つ目は、「モノを売る」のではなく「地域」や「考え方」を売らなければならないということです。最後に、4つ目として、コーディネーターはタコでなければならないといい、自分の足を食べるタコのように、自分が果たしてきた役割を担う人を、その地域の内部に育成することが必要であると話されました。

ご参考: 長野県食農連携戦略構想書pdf (11.9MB)

演 題:
小さな力の商品開発
講 師:
株式会社パイロット・フィッシュ 代表取締役社長 五日市 知香

東京研修3_講師3

(五日市 知香氏)

 資本力のない小さな事業者を中心に、商品開発の企画、パッケージデザイン、広報、販路の入口から出口までの一通りをコーディネートしている講師より、地方での商品開発、現場での取り組みの話についてご講演いただきました。五日市氏が商品開発をする上で目標としているのは、生産者や製造業者の収入が上がり少しでも生活が楽になったといってもらえるようにしていくこと、また、それがきっかけで地域の活性化や地域貢献に結びつけていくこととのことです。

 講演では、実際、商品開発を行うにあたり、何を使って商品開発をすればいいかわからない、何を作ればいいかわからない、何から手をつければいいかわからないという問合せを受けることが多い中、まずは素材の価値や個性を冷静に見極めること、そして既存の素材の魅力に気付くことが大切であるといった点を話されました。さらに、どこで光りたい商品なのかを踏まえ、売り先や売る相手などの販路をしっかりと研究することが大切だと話されました。生産者はうちの野菜、山菜、水産物は一番だという話が多いが、本当にそうなのかを冷静に見極めた上で他の地域では、どのような物がどのような形、パッケージ、価格で売られているのかを見て、自分たちで考えてほしいと述べられました。

 さらに、地方紙などのメディアにきちんと商品の取材をしてもらえる準備として、価格などの基本情報と共に商品のストーリーを必ず盛り込んだプレスリリース資料を作るべきだという点を述べられました。記事に取り上げてもらうのは、消費者には、いい商品だから取り上げてもらっているという意識も高く、広告よりもある意味、影響力があり、その後の御礼、現状報告など、記者との関係構築が大切だと述べられました。

 また、その他のポイントとして、中身さえよければ・・・では通用しない、内容に見合った「素晴らしい服」を着せることで、商品の印象も変わり、手にとってもらえる工夫ができるといったことや、商標登録をすることの大切さなどが述べられました。

演 題:
デザイン戦略からの地域プロデュース  ⇒講演データpdf(5.8MB)
講 師:
有限会社楽園計画 代表取締役 田ア 聡

東京研修3_講師4

(田ア 聡氏)

 沖縄在住のFACOであり、沖縄県内外の生産物加工、地域ブランドの戦略からコーディネート、ネーミング、パッケージデザイン、広告宣伝等様々な範囲で活躍されている田ア氏より、デザイン戦略からの地域プロデュースと題したご講演をいただきました。

 田ア氏は、ご自身をライフデザインするため沖縄に移住したのがはじまりで、現在の取り組みに携わるようになりました。社会が小規模マーケットに変貌していく中、どのように地域コミュニティをつくっていくかが鍵となること、沖縄は独自文化で素材は多くあるが、なかなかビジネスに結びつかないのが実情だと感じ、沖縄をどうデザインするかという考えのもと様々なプロジェクトに携わられているそうです。講演では、泡盛プロジェクト、八重瀬町プロジェクト、竹富島水牛モッツァレラプロジェクト、ぬちゆくいプロジェクト、食の風プロジェクトについての概要について話されました。泡盛においては各々の商品の中身において差別化をつけるのが難しい中、パッケージデザインの違いや、iPhoneアプリなどのITを活用して、泡盛を盛り立てていくといったPRやが求められるといった話、各々の活動を通じ、雑誌を使った啓蒙活動やシェフを巻き込んだ地域活性化の提案が求められるといった話をされました。

演 題:
消費者視点に立った食のブランドづくり  ⇒講演データpdf(0.7MB)
講 師:
有限会社コートヤード 代表取締役 新田 美砂子

東京研修3_講師5

(新田 美砂子氏)

 関東から地域に入り込み地域への商品開発のプロジェクトを行うと共に、首都圏でマルシェなどの活動、現場と購買側の両サイドに立ち、東京と地域をどのように結びつけるかといった取り組みをされている新田氏より、消費者視点に立った食のブランドづくりのコーディネートについて、ご講演をいただきました。

 新田氏は、現在、野菜や農産物に着目されており、ブームではあるが、本当に定着させること、農産物の消費の拡大をどのようにすればいいのかを突き詰めたところ、ただ料理教室をやるのではなく、野菜のバックグランドや旬について伝えること、農産物一つ一つの個性を伝えることが必要だという思いを持ち、生産者と消費者の間に立ったコーディネート活動を推進してこられました。「自分は一消費者(主婦)であり、そのような視点から考えたときに、男性視点から作った物は消費者ニーズからかけ離れていることも多く、そういった内容を産地にフィードバックできればいい。今まで、他と比較してものをつくる機会があまりなく、どのようにものを売っていけばいいのか困っている生産団体、生産者、行政の方が多くいる中で、首都圏消費者のニーズのフィードバック、売り場としての東京の魅力を伝えていきたい」という思いで活動をされているとのことです。

 物があふれかえり、買わなくなってきた今、新しい価値観やものさしがでてきて、売り場や売る方法が変わってきている。生産者と消費者の太いパイプを繋げるためにどのようにすればいいかを考え、それに対しての的確な橋渡し役をしていくことが必要だということを話されました。6次化産品の売り場は、スーパーとバッティングしたら負ける。手作り感、鮮度感が最大の強み、日常的で慣れ親しみ易い商品や、その場にしかないもの、非常に手間のかかるものなど、直接消費者に訴求していくための情報と出口をきちんと生産地側に伝えていく立場、その場を広げていくための役割を担っていくことがコーディネーターには求められるのではないかとのことです。

 また、新田氏は、マルシェの取り組みに立上げの段階から携わられており、情報、信頼関係がそぎ落とされ、物だけが流れる次代の中、単なる売り場ではなく、作り手と売り手のコミュニケーションの場がマルシェの魅力だとし、ただ物をつくるだけでなく、どのようにみせるか、演出をしていけるか、商品の説明をきちっとして売り、コアなファンを増やしていくことが今後の社会には求められていくという話をされました。

全体をつうじた質疑応答、総まとめ  16:55〜17:25

東京研修3_会場の様子

(会場の様子)

東京研修3_参加者からの質問

(参加者からの質問)

参加者からの声

  • みなさん熱意があり、参考になる講演ばかりでした。熱意だけではなく強い理念を感じました。
  • 内容が大変良く勉強になりました。コーディネーターの役割を各々の立場でお話頂いたのが良かったです。
  • 6次産業化のハード面の説明と全国のFACOの取り組みとしてのソフト面の話のバランスがとても良い素晴らしいセミナーでした。
  • 新たな法律と、農水の担当者から直接の話により、思いが伝わり良かったです。実際に立案された方々の意見を伺えた事で今後を考える良い参考になりました。
  • とにかくアクションすることの大切さを各講師から感じました。
  • FACOの実際の取り組みを把握でき、活動の参考になりました。
  • コーディネーターという仕事について興味があったため参加させていただきましたが、やりがいと合わせて現場の厳しさを聞くことができました。今後、自分自身としてどう動くかについて考える意味でも大変参考になりました。
  • 成果を挙げながらも課題を示してくれたこと、産地サイドと都市サイドの両方の意見をきけたことが参考になりました。
  • コーディネーターの分野にも種々のタイプがあることをあらためて感じました。
  • コーディネーターは儲からない。儲けようとしたらやらない方が良いという言葉重みがありました。
  • 地域に戻り、地域が、企業が、農林漁業者が持つ課題を解決できるお手伝いに役立てたいと思います。
  • 参加者全員が知恵や情報の運び人。経験知や問題意識などを参考にしたいです。