海苔のトレーサビリティシステムに関するQ&A
平成19年3月30日

 海苔のトレーサビリティシステムについて、導入の目的や方法、費用対効果の考え方について、Q&A方式で解説をしました。「消費者・小売業者向け」及び「生産者・生産者団体及び加工・卸売業者向け」のQ&Aを作成しました。
 システムを導入する前の留意点や、既にシステムを構築している場合、構築したシステムの確認などに利用していただければと思います。
 このQ&Aは、今後、皆様からご意見をいただきながら、更新していく予定です。

消費者・小売業者向け

  
Q1 食品のトレーサビリティが確保されていると、消費者にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。
A1 食品に予期せぬ問題が発生した場合、その食品のロットや行き先を把握することで、回収や撤去が迅速に行われ、消費者への影響を低減することができます。また、原因の究明にも役立ち、将来的な品質の改善につながります。
食品について問い合わせた時に、その食品がいつ、どこで生産され、流通されたかを時間を遡って調べて回答をもらうことを期待できます。
関連 ・ご存じですか食品のトレーサビリティ(パンフレット)
・知っておきたい食品のトレーサビリティ(パンフレット)
これらのパンフレットは、農林水産省のwebサイトからダウンロードできます。
「農林水産省 トレーサビリティ関連」
Q2 海苔のトレーサビリティが確保されていると、買い手側(消費者・小売業者)にどのようなメリットがあるのでしょうか。
A2 一つの例としては、加工海苔製品(乾海苔、焼海苔、味付け海苔)について、平成18年10月より原産地表示の義務付けが始まりました。トレーサビリティに関わる記録を遡ることで、義務付けられた表示の正しさを証明してもらうことができます。また、海苔の場合は他の食品と比較しても、消費者の健康に危害を与える可能性は非常に低いと思われますが、夾雑物(わらなど)の混入などがあった場合に問い合わせをすることで、その原因を説明してもらうことができます。
関連 「海苔のトレーサビリティシステム導入の手引き」(以下、「導入の手引き」) 10ページ
 2-2トレーサビリティシステムの導入目的の設定
Q3 海苔の業界では、どれくらいトレーサビリティが確保されているのですか?
A3 現状すでに、ほとんどの生産者・生産者団体、乾海苔の卸売業者、海苔加工業者等において、トレーサビリティに関わる何らかの識別や記録の取組みが行われています。それらの取組みについて、「導入の手引き」に沿って各事業者が確認し、必要があれば改善することにより、フードチェーンを通した遡及や追跡が確実に可能になります。
関連 「(別冊1)海苔のトレーサビリティの現状に関する調査報告」
Q4 韓国産や中国産の輸入される海苔についても、「導入の手引き」に沿ってトレーサビリティシステムが導入されるのでしょうか。
A4 取り組む品目や、生産・加工・流通といった対象範囲は、事業者自身が設定します。「導入の手引き」に沿って、海外で生産・加工され輸入される海苔及び関連事業者を対象に含めてトレーサビリティシステムに取り組むことは可能です。
関連 ・「導入の手引き」 5ページ,1-2手引き対象の範囲 (2)対象となる事業者とその業務
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生産者・生産者団体及び加工・卸売業者向け

INDEX
「海苔のトレーサビリティシステム導入の手引き」について
レーサビリティシステムの導入
トレーサビリティシステム導入の費用対効果
トレーサビリティシステム導入の目的
トレーサビリティシステムの検証
その他

 「海苔のトレーサビリティシステム導入の手引き」について

Q1 「海苔のトレーサビリティシステム導入の手引き」は、いつ、だれが作成したものですか?
A1 農林水産省 消費・安全局の平成17年度補助事業の一環として、「海苔のトレーサビリティシステムガイドライン策定委員会」(座長:梅沢昌太郎・日本大学商学部大学院教授、事務局:社団法人食品需給研究センター。以下「策定委員会」)が設置され、そこで検討・作成されました。平成18年3月に公開しました。
この委員会は、ノリの生産から加工・流通・小売等、消費まで各段階の関係者の方が委員となり、農林水産省 消費・安全局及び水産庁とともに検討を行いました。
関連 「海苔のトレーサビリティシステム導入の手引き」(以下、「導入の手引き」) 3〜4ページ
 (6)海苔のトレーサビリティシステムガイドライン策定委員会について
「平成17年度の海苔のトレーサビリティシステムガイドライン策定委員会」
Q2 「トレーサビリティ」と「トレーサビリティシステム」の違いは、何ですか。
A2 「トレーサビリティ」の定義は、以下のとおりです。

生産、加工および流通の特定の一つ又は複数の段階を通じて、食品の移動を把握できること。

注1)この定義はCodex委員会総会(2004年6〜7月)で合意された下記の定義の訳である。
the ability to follow the movement of a food through specified stage(s) of production, processing and distribution
注2)この定義における「移動を把握できる」とは、川下方向へ追いかける追跡と、川上方向へ遡る遡及の両方を意味する。

「トレーサビリティシステム」とは、“トレーサビリティのための、「識別」、「対応づけ」、「情報の記録」、「情報の蓄積・保管」、 「検証」を実施する一連の仕組み。”と定義されています。ここでいうシステムとは、データベース等の情報システムを指しているのではありません。情報システムを導入しなくても、トレーサビリティシステムを構築することは可能です。
関連 ・「導入の手引き」 8ページ,1-4この手引きにおける用語の定義
「食品トレーサビリティシステム導入の手引き」平成19年3月改訂版(以下、「手引き」) 11ページ,3.定義
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 トレーサビリティシステムの導入

Q1 海苔のトレーサビリティシステムの導入は、必ず行わなければいけないのですか?
A1 義務ではなく、各事業者の自主的な取組みです。現在日本において、トレーサビリティシステムの導入が法律で義務付けられているのは、国産牛肉のみです。
関連 ・「導入の手引き」 2ページ,(2)この手引きのねらい
Q2 海苔のトレーサビリティシステムを構築するにあたり、どのようなことをすればよいのですか。
A2
  1. 何のためにトレーサビリティに取り組むのか、導入の目的を決めましょう。
  2. 取り組む品目及び事業者の範囲を決めましょう。(品目例:国産の焼海苔及び味付海苔製品、事業者例:生産段階から加工・卸売業者まで等)
  3. 導入の目的を達成するために、どこまで絞り込めるようにするのかを決めましょう。(例:共販した入札取引単位から、複数の生産者まで遡及できるようにする等)
  4. もの(結束紙、製品、出荷箱等)に識別記号を付与して、食品の移動が把握できるように、ものと対応づけて識別記号を記録しましょう。
  5. 記録は保管しましょう。保管年限は、製品の流通特性を加味して事業者で設定してください。
  6. 実際にトレーサビリティに係わる担当者に対して、導入目的や識別と記録のルール等について研修をしましょう。
  7. 定期的に、正しく識別や記録が行われているか、実際に製品から原料へ遡及および追跡ができるかなどチェックを行いましょう。改善するべき課題がある場合は、1.に戻って再検討してください。
関連 ・「導入の手引き」 第2章〜第5章
・「海苔のトレーサビリティシステム導入の手引き」のご紹介 7ページ
Q3 トレーサビリティを確保するために、各事業者が取り組むことは何ですか。
A3 事業者から見て、一歩川上の事業者からの仕入れから一歩川下の事業者への販売までの間で、原料や製品の遡及および追跡ができるようにしておくことが大切です。具体的には、原料や製品をどのような単位で識別し、どう記録するか、ルールを設定します。
そして、そのルールにそって識別や記録を実施します。仕入れたロットや出荷・販売するロットに識別記号を付与し、いつ、だれから、何を仕入れたのか、どの原料を使用してどの製品を製造したのか、いつ、だれへ、どの製品を販売したのか記録しておくことが大切です。
記録に記載する項目は、別冊2をご覧下さい。各段階の事業者の取組みをつなげることで、フードチェーンを通じたトレーサビリティが可能になります。
関連 ・「導入の手引き」 12〜13ページ,2-6識別と記録の関連
・(別冊2)各段階の記録項目(例)
Q5 (別冊2)各段階の記録項目(例)では、どのようなことが書かれているのですか。
A5 トレーサビリティシステム導入の目的によらず、取り組む事業者から見て、一歩川上の事業者からの仕入れから一歩川下の事業者への販売まで、原料や製品の遡及および追跡するために、記録するとよい基本的な項目の一例が示されています。
各事業者が導入の目的や業務内容・規模に応じて、別冊2を参考に記録を確認することが望まれます。
関連 ・(別冊2)各段階の記録項目(例) 1〜2ページ,1全般
Q6 トレーサビリティを確保するために、新たに記録をする書式を作成しなければなりませんか。
A6 必ずしも、新しく書式を準備する必要はありません。記録するとよい項目が満たされているか確認し、既存の記録を利用することで、対応は可能です。以下に、既存記録の活用例を示します。
  • 「一歩川上への記録」:仕入先業者からの納品明細書など
  • 「内部トレーサビリティの記録」:等級検査の記録、製造日報など
  • 「一歩川下への記録」:出荷・販売先業者へ提出する納品明細書の事業者控えなど
関連 ・「導入の手引き」 12〜13ページ,2-6識別と記録の関連
・(別冊2)各段階の記録項目(例) 2ページ, 1.4 既存の記録の活用
Q7 既存の記録を利用することで、ある程度のトレーサビリティが確保されています。あとは、何に取り組めばよいのでしょうか。
A7 達成する目的や効果に見合った、海苔の識別をしているか見直します。設定する識別単位の大きさにより、遡及および追跡できる範囲や手間は異なります。
そして、記録を使って遡及および追跡をするための識別記号や目的に応じた情報が書かれているか確認しましょう。記録はすぐに取り出せるよう整理をして、保管しておきましょう。
関連 -
Q8 トレーサビリティシステムを導入するときに、「海苔のトレーサビリティシステム導入の手引き」の他に、参考とすべきガイドラインはありますか?
A8 平成15年3月に作成された、トレーサビリティ導入にあたって、食品全般に共通した基本的な考え方を示した「食品トレーサビリティシステム導入の手引き」があります。この「手引き」は、食品のトレーサビリティに関する国内で最初のガイドラインとして、トレーサビリティシステムを導入しようとする生産者・食品事業者やその組織・団体の取り組みの基本が示されています。平成19年3月に、「手引き」の改訂版が公開されました。この文書は、(社)食品需給研究センターのwebサイトからダウンロードできます。
関連 「食品トレーサビリティシステム導入の手引き」平成19年3月改訂版
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 トレーサビリティシステム導入の費用対効果

Q1 海苔のトレーサビリティシステムに取り組むと、どのような効果があるのでしょうか。
A1 トレーサビリティシステム導入の目的によりますが、目的を達成することで、以下のようなことが考えられます。
  • どの原料を使って、どの製品を製造したか記録をすることにより、原産地などの表示の正しさを検証し、証明することができます。また、取引先や消費者から問い合わせを受けた場合、説明しやすくなります。
  • 何か問題が発生した場合、当該原料または製品の範囲を絞り込むことができ、迅速に回収や撤去を行うことができます。それにより、取引先や消費者へ与える影響を最小限に抑えることができます。
  • 何か問題が発生した場合、既存の生産管理や衛生管理などの記録と関連づけておけば、どの段階のどのロットに原因があったかが究明しやすくなります。これにより、責任の明確化や改善に役立てることができます。
関連 ・「導入の手引き」 10ページ,2-2トレーサビリティシステムの導入目的の設定
・「手引き」 17〜18ページ,4-3(3)費用と効果の考慮
Q2 トレーサビリティに取り組むことで、どのような負担が考えられるのでしょうか。
A2 トレーサビリティシステムを導入して、達成したい目的や効果と、導入に必要な費用を比較して、バランスのとれたシステムを構築することが大切です。導入のための費用としては、以下のことが考えられます。トレーサビリティシステム導入による効果と費用のバランスを考慮して取り組むことが大切です。
  • トレーサビリティシステムの基本構想や手順書の作成費用
  • トレーサビリティに関わる人員の教育・研修などの費用
  • ソフトウェアの開発や機器(計量器、情報処理機器など)を導入する場合の整備費用
関連 ・「手引き」 17〜18ページ,4-3(3)費用と効果の考慮

 トレーサビリティシステム導入の目的

Q1 ノリの生産に関する情報や、加工海苔製品の製造工程に関する情報の記録は、トレーサビリティに活かすことができますか。
A1 設定する目的によっては記録しておくと有効ですが、必ず記録しなければならないわけではありません。生産や製造工程の情報と、生産や製品ロットを対応づけて記録しておくと、責任の明確化、再発防止策や品質改善の検討に役立てることができます。
関連 ・「導入の手引き」 15ページ〜,第3章 目的に応じたシステムの設計
Q2 “トレーサビリティは一般に、消費者が購入した製品から、生産者を一者まで特定できることを求めているわけではない。”(「導入の手引き」2ページ)とありますが、複数名の生産者を特定できる場合、どのようなメリットが考えられますか。
A2 各事業者が設定する目的によりますが、例えば何か問題が起こった場合に、生産者を一者まで特定できなくても、複数名まで絞り込むことにより、原因の特定や、再発防止のための指導をしやすくなると考えられます。
関連 ・「導入の手引き」 2ページ,(2)この手引きのねらい
Q3 トレーサビリティシステムを導入する際、バーコードやICチップの利用やサーバの構築など、ITを利用しなければいけないのでしょうか。
A3 既存の伝票や帳簿を利用して、トレーサビリティシステムを確立することは可能です。ただ、パソコンを利用した記録の保管、バーコードやICチップの利用によって識別や記録作業を機械化・自動化した場合、効率化できると考えられます。しかし、必ず導入しなければいけないということではありません。
関連 ・「導入の手引き」 11ページ,2-2トレーサビリティシステムの導入目的の設定 (5)業務の効率性向上の支援
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 ■トレーサビリティシステムの検証

Q1 トレーサビリティシステムの導入で、情報の信頼性の向上などが得られるといいますが、そのためには導入したトレーサビリティシステムの情報のチェックが必要ではありませんか。また、具体的に何をすればよいですか。
A1 確かに、自らチェックすることが大切です。具体的には、以下のことを、定期的に確認することが考えられます。
  • 識別や記録など、定められた手順に従って作業が行われているか確認する。
  • 対象として設定した製品とその情報を遡及および追跡できるかどうか確認する。
  • 作業前後における食品の重量や数量の増減をチェックする。(物量会計)
もし、チェックした結果、改善すべき課題が見つかった場合は、再度システムの見直しをします。
関連 ・「導入の手引き」 24ページ,5-4内部監査
・「海苔のトレーサビリティシステム導入の手引き」のご紹介 7ページ
Q2 物量会計を行うと、海苔業界ではどのような効果があるのですか。またどのような計算をするとよいでしょうか。
A2 記録のミスを発見しやすくなります。また、実際に生産された乾海苔と、販売されている製品の量について、整合性が確保されているということを証明することができます。それにより、消費者や各事業者間の信頼関係を維持するという効果も考えられます。
実施する際は、各事業者で、物量会計をする単位や期間等を定め、仕入れた量と販売した量、在庫の増減等の整合性を確かめます。
関連 ・「導入の手引き」 24ページ,5-4内部監査
Q3 「導入の手引き」を満たすシステムを導入すれば、何か認証を取得することができますか。
A3 いいえ。「導入の手引き」は指針であり、認証基準ではありません。
基準としては、平成18年10月に、「食品トレーサビリティシステムの要件」(以下、「要件」)が公開されました。この「要件」に沿ってシステムのチェックを行い、すべての要件を満たしていれば、食品トレーサビリティシステムが導入されていると見なすことができます。食品トレーサビリティシステムの自己検証(事業者自らによるチェック)や、取引先による検証(直接の関係者によるチェック)、および第三者による検証を実施する場合の基準として活用できます。この文書は、(社)食品需給研究センターのwebサイトからダウンロードできます。
関連 「食品トレーサビリティシステムの要件」

 ■その他

Q1 今後、海苔業界において、生産・加工・流通の仕組みが変わった場合にも、この「導入の手引き」で対応できるのでしょうか。
A1 この「導入の手引き」は、策定委員会がまとめた最初の指針です。今後、トレーサビリティに関わる国内外の動向や海苔業界の動向に応じ、また実務に即したものにするために、必要に応じて改訂していくことが考えられます。
関連 ・「導入の手引き」 3ページ,(3)今後に向けて
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