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食品流通研究  2002年春号(No.3)

内容紹介

巻頭言

調査報告

  • 食料システムの国際比較−日本、韓国、台湾、アメリカの「食料を中心とした産業連関表」の分析−/三浦 洋子・・・2  要約
  • 国産牛肉の価格形成と流通の課題/関根 隆夫・・・17  要約
  • 日本における水産物需要予測/多屋 勝男・多田 稔・有路 昌彦・・・27   要約

食品産業統計

  • 食品産業景況・食品工業生産指数・加工食品輸入指数・加工食品小売動向・・・49

仕様

発行日  平成14年4月25日
編集/発行  社団法人 食品需給研究センター
62ページ
在庫なし

本文

巻頭言
貧しきグルメ

唯是 康彦(千葉経済大学地域総合研究所 所長)


ここ数年、デレビに食べ物番組が激増している。栄養、安全性、出荷状況はまだ良いとして、「こだわりの店」、「激安の店」、「旅先の店」、「ステキな店」、「大食競争」など枚挙にいとまがない。とはいえ、タレントの楽屋落ちみたいな、くだらない番組よりはましのせいか、つい終りまで見てしまう。これは偏に食事が「食欲」という人間の本能に根ざしているためではないか。それにしても、「美味しい物」を求めて何時間も行列を作っている姿にはほとほと感心させられる。

世は「中食」の時代だといわれる。われわれのライフスタイルが多様化したため、食事の場は家庭やレストランに限られない。「人生いたるところ」「青山」ではなく、「食場あり」である。しかし、この要望に応えるには、料理は「調理品」でなくてはならない。

独身者を狙い目とするコンビニは弁当が命だが、その開発競争は激烈を極め、ある大手の会長などはその開発試食のため、高脂血漿になってしまったと嘆いておられた。 先日、会議で最近伸びているファミリ−・レストランの売上はテイク・アウト用の「調理品」である、という話をうかがった。場所とサ−ビスの制約から解放されれば、店は経費節減に役立つし、客は家庭を含めて当店自慢のメニュ−を好きなところで賞味できる。

いまや、「外食」も「内食」も「中食」に組み込まれ、家庭もレストランもその一つの「点」になってしまった。そこでは「中食」という概念すら存在しない。「調理品」にしても完成品に手を加えて完成度をより高める消費者が現れているから、半製品と完成品の差も存在しない。食事はすべて調理品の「連続的なスペクトル」のなかに吸収されてしまう。

このように「食料システム」の内容そのものが変質しつつある。私が『食料の経済分析』で初めて「食料システム」を主題にした昭和46年頃には殆ど関心は持たれなかったが、いまでは「表示問題」など、システムを利用した犯罪が増えている。「地方分権」の時代、「殖産興業」は民間や地方自治体に任せ、「中央政府」の使命は広義の「安全保障」でなければならない。それは「食品の安全性」や「食品ロス」から「食料の安全保障」まで守備範囲は広い。それを確実にするのは「情報」であり、そえだけに当センタ−は重要度を増してきているといえる。

ところで、このように「食料システム」が整備されればされるほど、「人間のブロイラ−化」が進展してくる。たしかに「食事」が水道のコックを捻るように簡単に得られれば、便利ではある。しかし、食品の表示を見なければ分からないほど、消費者の主体性が失われては、行政の「安全性」チェックも果てしない。へこんだ腹にあばら骨もあらわに餌を求めて彷徨する狼の姿に「食」の本質があるとすれば、寒風のなか「こだわりの店」に行列を作る「貧しきグルメ」にこそ、真の「食」が潜んでいるのかもしれない。

調査報告
食料システムの国際比較
−日本、韓国、台湾、アメリカの「食料を中心とした産業連関表」の分析−(要約)

三浦 洋子(千葉経済大学 助教授)


本研究は、日本、韓国、台湾という東アジア3国と、アメリカの「食料を中心とした産業連関表」を作成し、各国の「食料システム」を比較・検討した。その結果、これらの係数は、概して4国ともかなり接近していて、産業構造が似通っていることがわかった。食料関連部門に関しては、影響力係数・感応度係数は弱く、また各誘発係数も非常に低かった。さらに、将来日本の産業構造がアメリカのようになった場合、国内生産はどのように変化するか、また同様に、韓国や台湾が日本のようになった場合、どうであろうかという「産業構造の先進化シミュレーション」をおこなった。

調査報告
国産牛肉の価格形成と流通の課題

関根 隆夫(食品需給研究センター)


国産牛肉の価格形成についてみると、食肉卸売、小売いずれも低価格志向が顕著となっており、収益性は年々悪化する傾向にある。食肉小売においては専門小売店の激減、また、近年、急速に拡大してきたGMS・SMチェーンは破綻や再編等が相次ぎドラスティックな展開をみせているのに対し、食肉卸売では企業の再編淘汰がさほど進展していない。この要因として食肉卸売は専業が少なく、輸入牛肉市場の拡大や好調な食肉総菜の需要に支えられてきたことによると考えられる。しかし、今後は国産牛肉の家計消費市場の拡大が難しく、今後は食肉の安心・安全性対策等のコスト上昇要因から収益性が一層悪化し、再編淘汰は避けられないのではないか。

調査報告調査報告
日本における水産物需要予測

多屋 勝男(東京水産大学)
多田 稔(中央水産研究所)
有路 昌彦(京都大学大学院)


本研究は、時系列による計量分析が中心である。そしてより厳密な計測を行うために非定常時系列分析の理論と応用(単位根・共和分・誤差修正モデル)を用いている。個別財の需要関数(CEDS)により各魚種の所得弾力性と価格弾力性を計測し、水産物消費の価格反応と所得反応を明らかにすることで、水産物需要の特質を明らかにし、将来的な需要を予測する。さらに水産物と他の動物性タンパク質源の代替補完関係を明らかにするために、AIDS−ECMによる計測を行っている。

分析の結果明らかにされたことは、1)日本の水産物の需要が、将来的には現在の水準を維持するということと、2)他の動物性タンパク質源の価格の変化によっては水産物の需要は大きく変化しないことを表した。このことは「水産物需要の復元性」の証明にあたる。このことは非常に重要なことを表しており、水産物の需要は固定的であるいうことである。すなわち、肉類等によって代替されることができないため、持続的な水産物供給システムが極めて重要であるということになる

一般社団法人食品需給研究センター    Food Marketing Research and Information Center

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