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食品流通研究  No.8(2004年1月)

内容紹介

巻頭言

調査報告

  • 食料システムにおける生産技術構造の後退 ――1985〜95年の変動要因分析/唯是 康彦・・・2  要約
  • 韓国の食品工業 ――「食料・農業を中心とした産業連関表」による韓・日の比較分析を中心として
    /三浦 洋子・・・15  要約

食品トレーサビリティ特集

  • 食品トレーサビリティシステム標準化の必要性/松田 友義・・・35  要約
  • トレーサビリティシステム開発・実証事業開発責任者座談会/新宮 和裕、渡辺 勉ほか・・・46  要約
  • トレーサビリティシステムへのニーズを探る ―宮城県産カキのトレーサビリティシステム開発事例から
    /酒井 純・・・58  要約

技術開発の支援

  • 平成15年度食品産業における技術開発支援事業の公開成果発表会・・・67
  • 平成16年度食品産業における技術開発支援事業の課題募集のお知らせ・・・68

食品産業統計

  • 食品産業景況・食品工業生産指数・加工食品輸入指数・加工食品小売動向・・・69

仕様

発行日  平成16年1月25日
編集/発行  社団法人 食品需給研究センター
84ページ
定価2,100円(本体2,000円)完売しました。

本文

巻頭言
激動の時代に生きる食品産業

須田 洵(食品需給研究センター理事長)


この2〜3年、食品産業やその行政は、激動の中に揺れ続けた。国内初めてのBSE発生とそれが契機となっての相次ぐ偽装表示問題、それに伴っての全面的な規制の見直しと食品安全行政の枠組みづくり等々。食品企業においてもコンプライアンス等への対応など見直しが重ねられた。そうした中で、米国におけるBSEの発生とそれに伴う米国からの牛肉の輸入ストップ、さらには国内、海外にわたる鳥インフルエンザの問題など、相次ぐ異変に、外食業界をはじめ食品産業全体が激震に見舞われている。そして、それらについて今なお収束の見通しはなく、先行きへの不安は大きい。


思えば、近年においてグローバル化が一層進む中で、わが国の食品産業は、自らの生き残りを賭けより安い原材料を海外に求め、コストを考え備蓄や在庫も極力抑え、ともすれば効率一辺倒に走らざるを得なかった。しかしながら、最近の一連の異変によって様々な教訓も得られ、これを機にさらに一段と逞しい対応力を備えた食品産業に育って行くものと考える。

これからもまだ起り得ることとして、やはり「食べもの」のことであるから、家畜の疾病のこと、それが人の健康に及ぼす影響、それらに対応した抗生物質や農薬の問題、表示やトレーサビリティの問題、さらには農業テロ、輸送障害等々、そして大地震などにも備えが必要となる。もともと原料高など劣悪な競争条件に栖されているわが国の食品産業にとって実に厳しいものがあろう。

こうした諸問題に加えて、私は「水」の問題も指摘しておきたい。昨年3月の第3回世界水フォーラムなどを通じてわかることは本来循環資源であるはずの水が、人口増加や農業、工業等による大量使用、森林の後退等により利用可能な水が量的に減り、かつ質も劣化しているのは確かなようである。

水の専門家の計算によると、牛肉1kgの可食部を増やすため7kgの飼料が使われ、残り6kgは糞尿として排出される。この7kgの飼料を生産するためとうもろこしで実に7トンの水が使われる。日本の畜産は米国等からのとうもろこしに圧倒的に依存しているが、果たして今後、米国(中西部)の「水」がどの位もちこたえてくれるであろうか。食肉の形で輸入するにしても相手国で膨大な水の使用がくり返されて行く。そういう「水」の問題の制約が顕在化してからではどうにもなるまい。


そのためにも、私は食品産業こそ生命産業の主柱としてリサイクルへの努力が今後一層重要となると考える。やがてはリサイクルへの対応の度合いが企業の社会的評価に決定的となる時代が来そうである。ところが、現実は食品残さの飼料等への活用ひとつ見ても未だ未だ道遠しの状況にある。

しかし日本の食品産業は種々の試練をのりこえ今日に至っている。かならずやこのリサイクル問題も含めてしたたかに対応し激流を乗り越えて行くものと確信する。無論、行政も農業や国民の食生活にとって大切な食品産業の存立のためできる限りサポートして行くことが期待される。

調査報告
食料システムにおける生産技術構造の後退
― 1985〜95年の変動要因分析 ―(要約)

唯是 康彦(地域政策フォーラム 代表)


食料システム中心の「産業連関表」に要因変動分析を施し、昭和60年から平成7年までの品目別「国内生産額」の変動をみると、「最終需要要因」はすべて増加しているのに、「生産技術構造要因」は調理食品と有機質肥料とサービスを除いて、他はすべて後退している。これは20部門統合表を用いた結果なのだが、ここには「統合問題」という厄介な問題が潜在しているので、単純な結論は下せない。これを検討した後、111部門統合表を分析する。これが20部門統合表の分析結果について、その内訳を示していると仮定するなら、今後は具体的事例と照合しつつ、経営組織の改善や生産技術開発の指針に役立てることができると考えられる。

調査報告
韓国の食品工業
−「食料・農業を中心とした産業連関表」による韓・日の比較分析を中心として−(要約)

三浦 洋子(千葉経済大学助教授)


韓国の食品工業の食生活に及ぼす影響を考察した後、事業所数や就業者数、売上額、付加価値額、特化係数といったミクロ指標と、1985-90-95年の「食料・農業を中心とした産業連関表」というマクロ指標を作成し、投入と産出状況、および影響力係数や感応度係数、生産、輸入、粗付加価値の各誘発依存度と誘発係数の計測、さらに1985年と95年との変動要因分析を行い、日本との比較を試みた。また韓国の食品工業の発展過程を、植民地時代の日本企業や戦後のアメリカの食料援助との関連までさかのぼり、時代別、部門別に検討した。

食品のトレーサビリティ特集
食品トレーサビリティシステム標準化の必要性(要約)

松田 友義(千葉大学大学院教授)


トレーサビリティシステムにより提供される情報は、取引履歴・所在履歴を明らかにするための「流通経路履歴」と、生産・加工・輸送・保管履歴等商品の安全性を担保するための「安全履歴」に区別できる。前者は品目が異なっても質的に同じ情報と考えることができ、この部分の標準化、あるいはシステム間で情報を共用できるような仕組みの開発が求められている。そのためには、トレーサビリティ情報であることを示す識別コードや、それらの情報にアクセスする手段が標準化されることが望ましい。

食品のトレーサビリティ特集
トレーサビリティシステム開発・実証事業開発責任者座談会(要約)

新宮 和裕:日本冷凍食品検査協会 検査事業本部検査企画部長
渡辺 勉:青果物EDI協議会 事務局長
酒井 純:食品需給研究センター
長谷川 潤一:食品需給研究センター


農林水産省補助事業の一環として、平成14年度にトレーサビリティシステムの開発・実証試験を行った団体の開発責任者2名を招き、座談会を行った。お互いのシステムの特徴や共通点を整理するとともに、今後のトレーサビリティシステムの普及・発展の方向性を探った。

食品のトレーサビリティ特集
トレーサビリティシステムへのニーズを探る
――宮城県産カキのトレーサビリティシステム開発事例から――
(要約)

酒井 純(食品需給研究センター)


トレーサビリティシステムを導入する上では、消費者や事業者のニーズを把握することが欠かせない。しかし現段階では、消費者だけでなく事業者の担当者も、システムの全体像を共有できていない状況にある。宮城県産カキを事例にとり、実証試験以降に行った調査結果から、消費者や量販店のニーズを明らかにした事例を紹介する。事前の調査だけでなく、導入を進めながら再度評価することが重要である。

一般社団法人食品需給研究センター    Food Marketing Research and Information Center

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