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もの・ことを推進する

地域食料産業クラスター検討WG−地域事例情報交流会− 意見交換

地域連携推進に向けた意見交換

はじめに

コーディネーター・長谷川(コーディネーター・長谷川)
 本日は、各地域での取組みを中核で動かしている5名の皆さんに発表していただきました。ここからは意見交換に入ります。基本的には食料産業クラスター促進事業対策事業地域食料産業クラスター検討ワーキンググループの皆さんから発表いただいた皆様へのご質問等を、逆に発表いただいた皆さんからご質問をいただいてもよいと思います。またオブザーバーの皆さんもご質問・ご意見がありましたらお話しいただければと思います。

枠組み形成におけるエリアの広さと制約について

WG委員・櫻井(WG委員・櫻井)
 クラスターは一定の地域内での取組みだと思うのですが、そのエリアは大小様々あるなという感想を持ちました。農水省が推進している都道府県というエリアだけでなく、それを超えるような取組みとか、その逆に、やっているうちに熱心な人が絞られてもっと狭い範囲になったという取組みがあ ったら教えていただきたい。

 結局、都道府県の枠に留まらざるを得ないのは、助成事業の情報を連絡するのが行政機関であることやその締切が早いこと等が制約としてあるのかなと思いました。


(コーディネーター・長谷川)
 皆様が取り組まれ てきた枠組み形成において、当初想定していたエリアの 広さと同等であるのか。全地域網羅的に取組みがなされているのか、むしろ地域によって濃淡があるのかどうか も含めて伺いたいと思います。

 また、枠組み形成を進めるにおいてキーになったポイント(人・もの・金等に関して)についてお話いただきたいと思います。


ノーステック財団・工藤(ノーステック財団・工藤)

 私どもの活動は北海道一円であり、広い範囲で個別の事業プロジェクトのビジネス開発と、市町村レベルでのクラスター研究会の支援という2つの形でやってきました。遠く離れた地域の企業同士が連携することはあまりな、北海道を約6分割した地域割でやっているのが現状です。2006年度からは私どものノウハウを地域の産業支援機関に移転しつつ協力しながらやっていこうと考えています。


にいがた産業創造機構・真島(にいがた産業創造機構・真島)

 私どもの場合は基本的には県の財団という縛りがあります。新潟の産業を元気にするというミッションがありますので、支援する企業に関して行政範囲を超えることは考えにくい。ただコンソーシアムの形成や連携という観点で、大学については県内であることには全くこだわっていません。県内の企業ニーズを解決してくれるシーズは全国から求めています。実際、競争的資金等へ申請する連携の枠組みも県内だけで完結することはほとんどありません。連携する独法や大学は県内にもありますが県外との連携も多くなっています。企業が独自のネットワークを持っている場合と、我々の方から紹介する場合の両パターンがあります。

 技術開発に関しては、競争的資金の活用は企業にとって必須なのかなと考えております。商品開発の場合は地域のつながり、地域の特産品という観点の方が大事だと思いますが、技術開発の場合は資金援助がどうしても必要かなという捉え方をしています。


つやま新産業創造機構・近藤(つやま新産業創造機構・近藤)

 津山市も市という範囲です。当初は地域活性化というレベルでしたが、我々も地域活性化から産業振興へ持っていかなければいけないということで、より広域な連携のためにスタート時点からの枠組みの範囲を広げる動きになっています。地元には美作大学があるのですが大学によって得意な分野が違いますので、県南の大学や隣の広島県の大学に協力をいただいて広域な連携をしています。ただあまり県をまたがることになると地産地消をうたいにくいという問題があると思います。現在我々はメーカー、素材提供者は地元で、ただし設備メーカーはよその地域からも参入してもらうという連携を、積極的に進める方向で動いています。


サイエンス・クリエイト・中野(サイエンス・クリエイト・中野)

 豊橋の場合もクラスター事業を始める1年前に、市の産業振興計画の5年の見直しのなかで検討したわけです。市のなかに事務局をつくると縛りがかかってしまいますから、最終的に第三セクターのサイエンス・クリエイトが事務局を引き受けるということで始めていますので、その辺は柔軟に、中心は豊橋と豊橋周辺の地域ですが、静岡の浜松側の企業も含めてスタートさせております。それを想定して浜松の会議所のなかに農工連携研究会をつくらせて、50社くらいですがそこで3年くらいいろいろな研究をしていて、そのお手伝いをずっとしていましたのでスムーズに形成できました。


九州沖縄農業研究センター・吉元(九州沖縄農業研究センター・吉元)

 紫サツマイモは南九州で生産されていますけれども、製品は日本全国で販売されています。着色料としては世界的なものだろうと思っております。

 競争的資金については、大きな企業の場合「競争的資金のグループに入ってしまうと自分たちのやっていることを相手に話さなければいけないから、もう競争的資金はいらない」と言います。むしろ企業から「資金を出すのでこういう品種を作ってください」という要望がありますが、我々は国の研究機関ですから簡単に受け入れられないこともあります。


(コーディネーター・長谷川)

 産学連携や技術を中心に考えていくとエリア意識はあまりなく、ただ中核機関の素性から地域としての限定がかかっていくということでした。

 原料は地域で生産されているものですからエリアを見なければならないけれども、開発して展開していくことを考えたときには、まずは地域、その次にはオールジャパン、そして海外かもしれません。

 競争的資金に産学官連携でトライする場合は、企業の大きさや研究開発に対する力量がかなりポイントになってくるということでした。

中小企業との関わり方と事業化のポイントについて

WG委員・佐伯(WG委員・佐伯)

 中小企業との関わり方で、とくに中小企業は大企業と違ってあまり資金もないので、皆さんに期待するところが大きいと思うのですがいかがでしょうか。

 また、食料産業クラスターのために新しく事業を形成する組織ができているのでしょうか。

 私はたつの市で紫黒米クラスターをやっており製品をつくっています。16品目近くを地元の方々が作ってはいるけれどもなかなか事業化できませんし、皆で集まって新しい事業を造る方向性も見いだせません。そういうなかでどういう方法があるのか、体験されていることがあればお聞かせ願いたい。


(九州沖縄農業研究センター・吉元)
 似たような製品がいっぱいあるなかで、重要なのはど う差別化していくかです。いろいろ相談に来られますが、たいてい今までにある製品の材料を変える場合が多く、全く新規のものはないと思います。そのときにどういうセールスポイントをアピールしていくかが重要だと私は思っています。中小企業の方の場合は、それが不足していて及ばないのかなと実感しています。だから私たちは、似たようなものがあるなかでどう差別化していくかを投げかけ、一緒に考えてやっていきます。


(サイエンス・クリエイト・中野)
 私どもが1 年かけてやってきた大葉クラスターでは、新しい商品を開発してみたい企業を10 社選んで、新商品開発に取組み、自分たちなりのクラスターを形成させました。関わった企業の力量は様々ですが、マーケットの担当者としてクラスターマネージャーを1 人必ずくっつけて見極めながら進めています。>


(つやま新産業創造機構・近藤)
 我々がサポートする企業は、事業規模が小さいところが多くて受け身的な考えが強くあります。それに区切りをつけるため現在はプロジェクトをいろいろ進めております。まずプロジェクトリーダーは企業の方になっていただいています。事務的なところは私どもがやりますが、進め方については必ずご意見をいただき、目標・ビジョンを話し合うために、時間はかかるのですが足を運んでいます。

 また、業務を進める上でモチベーションのアップを図るために、今まで全然知識のなかったことに関しては、専門家を招聘して勉強会を開催しています。何度も繰り返すことによって成長も見られます。モチベーションを上げていき、主役になって自己責任でやっていただくことが重要だと思います。

 事業形成は胚芽米や自然薯をキーワードにそれぞれが機能性を活かしながら商品開発していこうと今まさに取り組んでいます。ただそれぞれの目的が違うことが多いので、それをコーディネートし、売り方まで皆で考えていって、つくれば売れるという環境に少しでも近づけるように進めていきたいと考えています。


(にいがた産業創造機構・真島)
 産学連携の観点で言わせていただくと企業の力量がポイントです。大企業にとってみると競争的資金のニーズは低く、大学等に資金提供して秘密裏にやりたいのが本音だと思います。中小企業といってもピンキリで、少なくとも商品開発部門や研究開発部門を持っている企業でないと産学連携は難しいだろうと思います。数百名程度の規模の中小企業が1番開発意欲があって、資金的な需要を求めていると思います。


(ノーステック財団・工藤)
 食料産業クラスターのために新しく事業を形成する組織ができているかという質問に対して、実は自ら会社を興してやったのは余市だけです。研究会レベルで議論して、その次に誰がリスクを背負って事業化するかが物凄いハードルが高いのを実感しています。一方で私どもがそのリスクを丸抱えでやるのは難しい部分もあり、戦略的に企業に事業化を仕掛けた部分もあるのですが、やはり担い手の主体性がないとビジネスにつながらないというジレンマに悩んでいるところです。現状として担い手の自分でやるという覚悟を促すためにも、意見交換をしながら、お互いの役割分担を了解し合った上で進めていく必要があります。


(コーディネーター・長谷川)
 企業の力量ということで考えれば、産学連携のスタンスでは商品開発や研究開発部門を持っていることが1つのポイントになるというお話でした。そういった企業が日本にどれくらいあるのかを整理するのも1 つの視点であり、施策のターゲットが見えてくるかもしれません。

 また、力量を持つ企業において個別の事業を進めていく上でも、つやま新産業創造機構のように企業がプロジェクトリーダーになるやり方、それは企業が自己責任を持つということになります。さらにノーステック財団さんからお話があったようにリスクをどこが背負うのか。結局は企業なのでしょうが、それをフォローアップする形での中核機関のあり方に明確な線引きが必要でしょう。しかしその線引きは最初は見えないため、意見交換を繰り返していくことによってやり方がわかってくるのだと思います。

市場性と商品開発への対応について

WG委員・木附(WG委員・木附)

 ノーステック財団の工藤さんにお伺いします。食品のライフサイクルは通常短いですが、先ほどの事例の「あずきの素」は5 年くらいかけて開発を検討していらっしゃいました。ニーズを把握して行う場合でも商品開発のサイクルが合わないことがあると思うのですが、一次対応段階でアドバイスする際に市場性と商品開発に関してどのように指導、対応していらっしゃるのですか。


(ノーステック財団・工藤)
 一次対応段階では、非常に基礎的な話からすることになるのですが、担い手企業が誰に対して何を売るのかをまず明確にします。一見当たり前のことのようでも、つくった機械を売るのか、機械を使ったサービスを売るのかが明確になっていないケースもあります。まずそれを明らかにした上で、市場調査に関しては可能であれば業界の方にヒアリングを行い、難しければそれ以外の方法で情報収集して、大雑把な目安を立てるという考え方です。その次の段階でさらに突っ込んで調べていくことになります。市場調査等開発段階の手前の段階まで1 年半くらいかけてやっているのが現状です。


(WG委員・木附)
 1 つの商品だけ開発して満足して終わることよりも、基礎的な素材があれば他のいろいろな商品にも転用できるようなものを掘り出すところから指導されているということですか。


(ノーステック財団・工藤)
 食品以外にも機械装置の開発等いろいろやっているので、それらも含めての説明になりますが、基本的には商品やサービス等売る物をなるべく絞り込んで、誰に売るかを明確にすることに留意しています。

認証制度の評価基準について

(WG委員・木附)
 つやま新産業創造機構の近藤さんにお伺いします。認証制度の外部審査の話で、評価項目に地産地消というファクターがありました。原材料によっては市内だけのものではなく遠方から持ってくる場合もあると思うのですが、そういった場合どのように評価しているのですか。遠くのものを使うと審査結果が低くなるのでしょうか。


(つやま新産業創造機構・近藤)
 審査項目にはABCランクがあり、厳密にそれを加算するようなものではありません。桜さば寿司の例で言いますと、鯖は焼津産、昆布は北海道日高産、お米は岡山県産、お酢は地元ということで、確かにオール地産地消ではないのですが、それを埋め合わせるものとしてストーリー性や歴史・文化を加味して総合的に審査員の方にご評価いただいております。条件付き認証という形で、この点をもう少し考えなさいというご意見等をいただきながら認証していただいているのが現状です。

連携企業間の調整と利益配分について

(WG委員・木附)
 津山はすでに十数年以上クラスターに取り組まれていますが、企業間の調整や企業利益の部分、たとえば商品開発した場合の利益配分だとかに関し、工夫した点は何かありますか。


(つやま新産業創造機構・近藤)
 1つの商品に関してプロジェクトで動きますが、商品の開発自体は個・各企業の責任です。原材料においても自己負担でやりますし、個の責任でやっています。以前は皆でアイデアを出し合いながらいろいろな意見が出て、その方がよかったという意見も一部にはありますが、それではなかなか進まないというのが現状認識です。

 市場に競合がないかどうかなど販売戦略などは私どもでフォローさせていただいています。


(WG委員・木附)
 つまり共通要素的なところは皆さんで共有して、個別の販売計画なり、商品化なりは個々の企業の努力で運営している感じですね。


企業同士の連携について

(WG委員・木附)
 NICO の真島さんにお伺いします。先ほど県内の大学のシーズは一巡してしまったというお話がありましたが、研究所を持っている企業は開発した技術シーズをお持ちだと思います。本来クラスターのなかで企業連携して、企業のシーズを活かしつつ商品化していくことも重要なテーマだと思います。特許を申請していても使っていない技術も結構あるかと思いますが、企業側が持っているシーズとニーズのマッチングや情報をデータベース化しているなど、何か取組みはありますか。


(にいがた産業創造機構・真島)
 産産連携というイメージでしょうか。新潟の産業を見ているなかで、非常に特徴的だと思うことは、食品産業には基本的にOEM が少ないことです。どんなに小さな企業でも商品開発は自己完結でやり自社ブランドを持っているというのが、食品メーカーの一般的な形なのかと思います。食品の分野では産産連携は非常に難しく、特に中堅の企業はプラント等の製造自体を自社ノウハウで固めていますので、連携は難しい感じがしております。


(WG委員・木附)
 メーカー同士が連携することは難しいと思うのですが、クラスターなので流通・販売企業も当然参加すると思います。産産連携のなかでもつくる側と売る側の連携の可能性は当然あると思います。そういった取組みは何かないのですか。


(にいがた産業創造機構・真島)
 私どもはクラスターという観点から動いてはいなくて、どちらかというと、個別の結びつきの積み上げという観点から動いています。

 企業さんは「食品産業は製造現場を押さえることができないから、製造特許を取っても全く意味がない」、「食料品は、畑や海からの採りたてが1番価値が高くて、加工していくにしたがって安くなっていく。そのなかでいかに儲けを出すかが大変なのだよ」と言います。もともと数%の利益しかないところにロイヤリティを出すという連携は食品産業では成り立ちにくいと思います。


(コーディネーター・長谷川)
 OEM に関して若干補足させていただきます。

 産学連携を行っている企業は、地域に目を向けている企業だと思います。皆さんがお会いしている企業はそのような企業なので、OEMではなく自社ブランド完結になっている企業が多いということなのだと思います。

 食品産業においても、大企業を見ていくとその下請けとしてOEM はあります。大企業において産学連携が進むのであれば、今やっている地域産業クラスターではなくて、産業クラスターみたいな地域をあまり意識しないやり方かもしれません。

産学連携の成功の評価基準について

WG委員・新蔵(WG委員・新蔵)

 産学連携を行った結果の成功の評価基準をお持ちであれば教えてください。継続性や費用対効果を評価するのでしょうか。


(ノーステック財団・工藤)
 私どもの財団には研究開発部があり、そこはまた違う評価をするかもしれませんが、クラスター推進部としては事業化できたか、売上が上がったかが1番明確な基準です。本来は継続性も見るべきなのですが、3年続くか5年続くかは商品によって変わってしまうので、そこまでは議論していません。

 費用対効果については、個別の事業ですべてやっているわけではありませんが、北海道庁から補助金をもらっておりますので、予算要求の資料としてどれだけ効果があったのかという場合、「マクロで売上高はこれだけで、その結果税収としてこれだけ戻っています」とか、そういった形での分析はしています。


(にいがた産業創造機構・真島)
 明確なところは言えませんが、産学連携の部分だけで言えば競争的資金が取れるかどうかが1つの指標にはなっています。実際、5〜6倍の倍率のなかで採択されるコンソーシアムが形成できたのはそれなりの連携ができている表れだと捉えております。

 競争的資金で売上が出てくるのは20数%くらいということらしいので、売上を出口の評価にしたいのですが、産学連携という観点で見たときには少しレベルが高すぎるかなと思います。


(サイエンス・クリエイト・中野)
 産学連携で大学に事業化までせよと言うのは無理だと思っています。企業側が事業化するときには国のお金を使うのではなくて、地元のメインバンクや信用金庫とも連携していますから、そこに上手に持って行ってあげることで、売上を上げ、企業そのものが存続できるように持っていくことが評価の1 つの観点です。

連携支援の波及効果について

(WG委員・新蔵)
 1企業に対しての支援の波及効果として、業界全体に何らかの成果が及ぶような取組みの仕方、支援の仕方はされていますか。技術を同じ業界の他の企業に反映させたいときにはどういう取組みの仕方をされていますか。


(ノーステック財団・工藤)
 事例として経済産業省さんのサポーティング・インダストリーの事業(基盤技術を担う中小企業支援)を使いまして、道内の鋳物業者1 社が持っていた特許のノウハウを道内の鋳物業者数社に展開したケースはあります。企業の方で了解が得られればそういった展開もしていきたいと思っています。


(にいがた産業創造機構・真島)
 地域の産業的な広がりから申しますと、越後製菓さんは超高圧・静水圧の利用で20年来技術を引っ張っており、特許だけでも数えきれないくらいです。社長や会長は基本的にすべてオープンで、抱え込んでも産業は育たないという考えです。オープンにしてもイニシャルコストの問題で産業化の広い輪には広がっていかないという課題はありますが、少しずつ広がりを見せています。

 県の食品研究センターの話では、公設試で特許を取って許諾していくのではなくて、米菓産業やお餅の産業においてこのような技術が必要だという啓発活動が重要で、それによってその産業全体が伸びていくという話をされていました。

流通段階への売り込み方法について

WG委員・仲元(WG委員・仲元)
 流通業は、通販も量販も百貨店も基本的に出来上がった製品をセレクトして購入する形態をとっています。クラスターの皆さんは、いろいろ悩みながら一生懸命商品をつくってから、売り先を探していますが、例えば、ノーステックさんのSTEP2 のビジネスプラン検討段階の時点で、通販、量販、百貨店などのみんなを集めてビジネスプランをプレゼンテーションし、逆に売り手側に手を挙げさせるとか、クラスターの方が売り手を選ぶというやり方を検討できないかと思いました。特にどこよりも早くオリジナル商品を欲しがっているところには、このビジネスプランの段階で囲い込みができるかもしれません。我々みたいな大手であっても、ある程度技術が確立してくれば、一次産品である農業や漁業、畜産業を含めて大規模に一次産品をつくってもらい、その加工品を製造しようということに持っていくことも十分可能だと思いますし、いろいろなビジネスシーンが生まれてくるのかなと考えます。


(ノーステック財団・工藤)
 私どもの方でもどう市場性を高めて開発リスクを減らしていくかが課題でありまして、販路をどう確保していくかをノーステックとして仕掛けていかなければならない、通販や関係の量販店等にも仕掛けていかなければという議論はしています。これから連携を探れたらと思っています。


(コーディネーター・長谷川)
 今の話はもう少し大きな仕掛けでもよいかもしれませんね。イベントでの見せ合いではなくて、例えばアイドル歌手などの「スター誕生」みたいに、商品を買ってくれる商社さんや流通さんにプラカードを挙げてもらって、そしてそれで決まっただけで終わりではなく、そのプラカードを挙げてくれた企業さんと一緒にスターを作り上げていく。歌の詩であったり、曲であったり、その人のイメージであったものを一緒に考えていく。そういう機会をぜひ作れればと思います。

知財戦略や商標登録について

オブザーバー・勝野(オブザーバー・勝野)

 文科省の科学技術政策研究所の勝野と申します。今年の4 月から農水省から出向しております。文科省のなかでも知的クラスター、都市エリアという事業がやられていて、私どもの部署では地域イノベーションや産学官連携を担当しています。文科省の評価指標は、特許や論文の数、ベンチャー企業の数とか大学寄りの評価となっています。一方、農水省の食料産業クラスターの議論を聞いていると、商品サイクルが短いから特許は食料産業クラスターには合わないという議論になっていたのですけれど、継続性を考えると食料産業クラスターも知財戦略を考えないと、せっかく作ったものが真似されて売れなくなることの繰り返しになってしまうのかなと素人ながら思いました。

 食料産業クラスターを考えるうえで知財戦略をお考えになっておられるのか、また、特許だけでなく商標登録の話もあるのかなと思いますので、それも含めて食料産業クラスターでの知財の捉え方について教えてください。


(ノーステック財団・工藤)
 商標登録については、先ほど紹介した下川の手延麺ではやっています。また、開発にあたってビジネス検討段階で関係特許、類似特許は調べ上げていますので、抵触する部分があったり、逆に特許を出せる部分があったりすればケースバイケースで対応しています。


(九州沖縄農業研究センター・吉元)
 企業の方と共同研究という形でやる場合、企業のこれからの製品開発を守る上でも特許を取得することは必要だろうと考えています。日本で開発された品種が、原料またはその加工品として外国から日本に入ってくるのは問題がありますから、なるべく特許は押さえておくことを原則としています。


(つやま新産業創造機構・近藤)
 特許を取られてしまっていて困った経験があります。しいたけの成分のなかに酸化防止成分があるということで、しいたけの成分を抽出して製品を開発していこうとなったときに、某企業さんが特許を押さえていらっしゃったということがあり、そこで開発の芽は立ち止まってしまった経緯がありました。そういう苦い経験もしています。


(コーディネーター・長谷川)
 技術基盤として考えたとき特許は使えるものですが、商品を開発して商品になったときには特許云々ではありません。ライフサイクルが短いですから、せいぜい取って商標、意匠のレベルです。そこの戦略を整理して考えなければいけないのが産業財産権のあり方だと思います。特に食料分野においてはまだ始まったばかりの段階ですので、これについては議論を重ねて方向性を見つけていくべきなのかなと思います。

 意見交換したいことは山ほどありますので、できる限り次回かまたどこかの機会で考えていきたいと思います。1時間の短い時間ではありましたが、ありがとうございました。発表いただいた皆さんにつきましては貴重な情報をご提供いただきましてありがとうございました。本日はどうもありがとうございました。

(敬称略)
(文責:社団法人食品需給研究センター 深澤友香)

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