この総数管理の手間を削減しながら、回転率と回収率を高めるための新しい問題解決策が、通い容器の個体管理です。
通い容器の「個体管理」とは、1つ1つの青果用通い容器に、固有の識別番号(ID)をつけ、まずはレンタル業者が(そして将来は利用者も)、入荷・出荷の際に、そのIDを記録する手法です。IDの記録を容易にするために、電子タグやQRコードのような自動認識技術が用いられます。
2010年からレンタル業者が、一部の通い容器を対象に、個体管理を始めました。通い容器にIDをつけておき、基本的に入荷と出荷のときに、このIDを読み取って記録しておきます。
写真 イフコ・ジャパンの電子タグ付き通い容器
イフコ・ジャパン株式会社「イフコ・コンテナーF5328」
図 イフコのレタス用通い容器の取組み(2010 年)
所有者であるレンタル業者は、この個体管理により、どのIDの容器をいつ誰に貸し出したか、またいつ誰から返却されたか、記録を蓄積できるようになりました。
これにより、貸し出して返却されるまでの正確な日数が把握できるようになりました。また、一定期間内にまだ返却されていない通い容器の割合も明らかにできるようになりました。さらに、契約したとおりの流通経路で返却された通い容器の割合も明らかにできるようになりました。
現時点では、レンタル業者がIDを読み取っているだけなので、返却されていない通い容器が、サプライチェーンのどの段階で留まっているのかは、把握することはできません。しかし、貸出先ごとの、回転数・回収率の実績を明らかにすることができます。これにより、回収率や回転率の実績に応じたレンタル料金の設定が可能になっています。
また、所有者の職員が小売店等で通い容器の利用を見かけたときに、IDを読み取って履歴を確認することにより、正規に利用されているものか、流用されているものかを、明らかにできるようになりました。
図 通い容器のIDの読み取りによる貸し出し履歴の把握
注)貸し出し履歴はを電子タグに記録することも可能ですが、多くの場合タグやQRコードにIDのみを入れ、履歴情報はネットワーク上のデータベースに記録するのが一般的です。
将来的には、貸出先の事業者においても、IDを読み取って記録することにより、総数管理の記録作業の効率化が期待されます。
通い容器を借り受けて利用している事業者は、生産者団体や、食品の流通業者・加工業者です。これらの事業者は、電子タグなどのIDを、入出荷に伴う記録作業の効率化、食品トレーサビリティや産地情報伝達の効率化・高度化のためにも活用できます。
図 産地集出荷場での通い容器のIDの活用
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