2010年2月26日(金)信州大学松本キャンパスで「食農連携のための現地コーディネーター研修(長野)」を開催しました。研修には、県内外の連携支援機関、大学、行政、食品メーカー、流通業者、コンサルタントなど多岐に渡り、主体的に連携事業に携わっている30名以上の方々にご参加いただき、講義と実践研修を通じて盛況に終えることができました。
(社)食品需給研究センターでは、今年度「自律型モニタリングシステム導入の手引き」を食農連携担当者やコーディネーターのための教材として作成しました。この手引きは、食農連携の取組みを持続的に推進するためのツールとして開発した「自律型モニタリングシステム」の活用方法を紹介するものです。今回の研修において、この手引きの活用の意義、目的、活用方法などを説明しました。
連携の取組みを達成させるためには、まずは具体的な目標やそのために必要な取組みと効果を明確にするプランニングをし、実行していきます。その中で中間目標を定めて達成状況をチェック(モニタリング)します。さらには、モニタリングの結果に応じて取組みを見直していくという作業が必要になります。 事業を推進するために必要な条件がどの程度整っているのかという現状をチェックする現状把握指標、また事業の達成状況を把握するための達成状況把握指標、達成状況をチェックするためにどのような戦略をとり目標に導いていくのかといった論理構造を定点的に確認するロジックモデル等の自律的に計画の進捗管理を行うツールの活用方法を紹介しました。
今回の研修では、研修用教材として作成された「食農連携における新製品開発の方法」を活用して、講義が進められました。
加藤講師によると、さまざまな開発商品をみてきた中で、「製品開発」までは終わってもその先の「商品」までには至らないというケースが多く、実際の現場ではものづくりがうまく展開されていないと感じることが往々にあるといいます。そこで、この度、加藤講師と(社)食品需給研究センターでは、講師が大企業で経験したものづくりの手法をもとに、中小企業と農業との連携である食農連携にも取り入れられるノウハウをとりまとめた教材を作成しました。
教材は、食農連携における新製品開発で抑えておきたい7つのポイントから始まり、大企業に学ぶ製品開発フロー、食農連携における新製品開発の実践という構成で成り立っています。大企業で製品開発に携わった経験をもつ講師より、製品開発においてはどのような視点が必要となってくるのか、中小企業では見落としがちな大企業の製品開発に対するノウハウのポイントなど、講師の経験談を取り入れながら、大変わかりやすくお話いただきました。
講義で話された食農の連携における製品開発のポイントの一部を以下に紹介します。
実践研修は、1グループ6〜7名のグループワーク形式で、グループメンバーにより意見を出し合いながら進めました。今回の実践研修では、講義で紹介したツールの1つとなるポジショニングマップの作成を通じて、研修参加者が自らの知識や経験にもとづき、主体的に新製品開発のポイントとなる、製品コンセプトの構成要素の整理を行い、製品コンセプトのつくり方を考えていきました。
新製品開発においては、製品コンセプトの構成要素をしっかりと考えることが重要です。グループワークでは、市場に流通している3社5銘柄の納豆を用いて、「市場に直接的な競合品はあるか、市場の代替品は何か、それとの比較で差別的優位性は確保できているか」などといった視点に立ち、基本的な製品機能、パッケージデザイン、付加的な機能などに対する構成要素について話し合い、講師が指定した5銘柄のうちの1つ、商品Aがどの位置にポジショニングされるかを整理していきました。
各グループ非常に熱心に、ネーミングの与える印象やパッケージデザイン、パッケージの開けやすさ、原料の形状、産地、重量と価格の関係を考察したり、実際に試食して味を見比べるなどをして、各々の商品のポジショニングがどこにあるのか、また商品Aがなぜこのポジションにあると考えられるのか、差別化ポイントは何かなどについて意見を述べ合い、とりまとめた結果をポジショニングマップで示しました。
各グループグループワークの結果をもとに、それぞれポジショニングを行った内容を発表し、講師から各グループに対して講評をいただきました。また、最後に総評として、ポジショニングのねらい、品揃え戦略、価格戦略、値ごろ感に対する考え方、競合との差別化戦略、自社のコアコンピタンスに基づいた製品開発をしていくべきことなどが解説されました。