開催報告:地域コーディネーター人材育成研修【高知県】
農業を核とした地域活性化に向けて 〜売れる農産物づくりの戦略とコーディネート〜
2011年1月17日(月)高知県工業技術センター第2研修室で開催された「地域コーディネーター人材育成研修(高知県)」では、農業生産法人、農業協同組合、行政、コンサルタントの方々など、地域の連携に取り組む方々にお集まりいただき、自らも農業者として生産活動を行いながら、野菜の栽培指導・流通コーディネート等を行っている有限会社コスモファームの中村敏樹講師より、売れる農産物づくりに向けて、6次産業化につながるトータル的な戦略づくりおよびコーディネートに関するポイントを、わかりやすく説明していただきました。
講師による講義に続いて、講師を含む研修参加者全員による、地元高知の地域連携に対する意見交換会が行われ、有意義な研修の場となりました。
研修には24名の方にご参加いただきました。
講義 9:00〜10:05
- テーマ:
- 農業を核とした地域活性化に向けて
〜売れる農産物づくりの戦略とコーディネート〜 ⇒配布資料(6.5MB)
- 講師:
- 有限会社コスモファーム 代表取締役 中村 敏樹氏
主な講義内容
(有限会社コスモファーム 代表取締役
中村 敏樹氏)
まず、講師からの提案として、売れる農産物作りのポイントと事業計画を立てる際のポイントが語られました。
売れる農産物作りのポイントとしては、@美味しさ・安全性・機能性を高める栽培技術、Aターゲットの明確化、B荷姿や情報提供による商品価値向上、C商品にあった販路開拓、Dターゲットにあわせた商品開発等を行うことにより、差別化を図ることが提案されました。
事業計画等を立てるポイントとして、国際情勢や環境問題等の社会情勢を把握し、10年後に農業が置かれている状況を予測して事業計画を立てることが提案されました。
次に、事例として、講師が経営する農業生産法人における、次の取組内容が紹介されました。
@少量・多品目生産を行うことで、一年を通じて多くの種類の野菜を少量づつ出荷し、販路については、ホテルやレストラン等を自分達で開拓し、市場の価格競争に巻き込まれないように注意していること。
A都市型直売所(マルシェ)を東京都内で展開することにより、直接消費者との交流・情報交換を行い、適正価格の認知や新商品開発に結び付けていること。
B社会情勢を鑑みて事業計画を立てており、世界的な食糧危機が今後起こりうる恐れがある一方で、日本国内では耕作放棄地が増え続けていることから、千葉県の耕作放棄地の整備を行い、都市生活者向けの農業体験畑等として活用していること。
なお、こういった販路開拓や消費者との交流を行うためには、生産者自身が「コミュニケーション能力」を身に付ける必要があり、その訓練の必要性が指摘されました。
意見交換会 10:15〜11:45
- テーマ:
- 高知の地域資源を活用できる市場ニーズの把握、販売戦略の策定まで
(高知大学国際・地域連携センター
特任教授 北添 英矩氏)
高知大学国際・地域連携センター北添英矩氏をコーディネーターとして、参加者全員がそれぞれの立場から、高知県の食と農に関して日ごろ疑問に思っていることなどを話し合い、それに対するアドバイスを講師から受ける意見交換を実施しました。
- 高知県の農業の特色として、どういった特徴を外部にアピールしていけばよいのかという疑問については、講師より、高知県だけでアンテナショップ等を通して情報発信するのではなく、四国八十八箇所という特長を活かして、四国として連携を図って取り組む方法もあると提案されました。
- 商品に付加価値をつけるために、特別栽培や有機栽培などの情報を発信することが重要な手段として考えられるが、生産者や関係者の間には、いわゆる情報格差があるという悩みについては、講師より、対象者にわかりやすい情報発信、例えば消費者であれば「美味しさ」を中心とした情報発信を行うことが有効ではないかとの意見も挙がりました。
- 農業法人として数年取り組んだ後、辞めていく人が多く、何が問題となっているのかという疑問については、講師より、全国的に「ブランドを作ろう」とする動きが見られるが、ブランドとは消費者が認識して出来上がっていくものであり、消費者に明確に違いを伝えられなければ、価格競争に巻き込まれて疲弊して辞めてしまう人が多いことと、これを避けるために、消費者にわかりやすい「美味しさ」を中心として、自分達の作るものの良さを伝えていくこと、販路を自分達で見つけてそこで売れる物を作ることの必要性が説明されました。
- 規格外の農産物を市場に流通させると低価格の値段が付き、その規格外農産物の価格に引っ張られて、全体の価格が下落してしまうという悩みについては、講師とコーディネーターより、小規模であれば、規格外の農産物は食品等に加工し自ら販路を開拓すること、JA等の大規模であれば、高知県行政が冷凍処理施設の設置にも力を入れ始めたため、そういったもの利用を検討することの提案が挙がりました。
意見交換会の様子
(全体写真)
(意見交換会1)
(意見交換会2)
(意見交換会3)
(意見交換会4)
参加者からの声
- 色々な話が聞けて良かったです。
- 高知県には個人生産者が直接参加している、6次産業化の成功モデルがあります。それは「日曜市」などの各地で開かれている「街路市」だと思います。全国的に知名度もあり観光客も多く来ており、県や市も広報活動に積極的に取り組んでいます。これを参考にすれば、様々な地域の活性化を行うことが可能だと考えます。昔からある身近なものを見直すことも大切だと考えます。
- 地域振興について、今後どのように関係していくべきかという点について、学習をさせていただきました。6次産業化について、今後検討していきたいと思います。
- 視野を広めることが出来、参考になった。
- 意見交換で挙がった、「販路拡大が一番重要である」という言葉が身に沁みました。高知の農業に欠けているのは、「多様な販路」ではないかと思います。