2011年2月3日(木)セントコア山口サファイアの間で開催された「地域コーディネーター人材育成研修(山口県)」では、行政、連携支援機関、食品関連事業者、コンサルタント、農業生産法人、大学の方など、地域の連携に取り組む方々にお集まりいただき、講義とグループワークによる実践研修を通じた活発な意見交換が行われ、大変有意義な研修の場となりました。
研修には約60名の方にご参加いただきました。
中国四国農政局山口農政事務所 内田 邦彦 氏
開会の挨拶では、農政の現状として6次産業化法が公布され、平成23年度には「未来を切り開く6次産業創出事業」により、農林水産業者の6次産業化に向けて、総合的なサポートを行う6次産業化プランナーの公募が行われることになっていること、研修参加者が今回の研修を活かして、6次産業化プランナーとして、活躍されることへの期待が述べられました。
また、6次産業化を推進するためには、関係者間の連携が重要であり、今月立ち上げられた「中国・四国地域6次産業化仲間の会」の紹介がなされ、同会への参加が募られました。
全国に先駆けて平成14年より取り組まれた「地産・地消」の経緯とその成功事例の紹介がなされました。
きっかけとして、山口県知事より、「県外へ市場を求めていく方法もあるが、自分たちは県内の消費に目を向ける」ことが提案され、流通や飲食業、品加工、生産者団体などの、食品産業の様々な部署が連携・協同して、「地産・地消」が進められたことが説明されました。
「連携・協同」の内容としては、流通販売業では、山口県産農水産物等の販売に積極的に取り組む「販売協力店」や、山口県産農水産物等を食材として積極的に利用する「やまぐち食彩店」への参加を募り、その拡大に努めたことが挙げられました。また、学校給食への県産の米やパン、麺、豆腐の導入も全国に先駆けて行われていること、県産原料を使用した食品が消費者に判別しやすいように、共通のマークをつける取り組みについても紹介がなされました。
実物の紹介として、山口県産原料を利用した「やまぐちそだち地産知食 寄せ豆腐」、「けんこう応援団ブルーベリージャム」、コッペパンの試食も行われ、参加者より「美味しく、是非購入したい」等の好評な意見を得ました。
コーディネーターの役割と今後、6次産業化等の連携を深めて市場を拡大し、地域の活性化に努めていくために必要な事項に対する紹介がなされました。
先ず、市場には既に様々な商品があふれており、商品開発において差別化を図る必要があること、そのため「外観」と「特徴」に違いを持たせて消費者に識別させて手に取らせる、さらに「食味」を他の商品よりもよいものを提供することで、リピーターを獲得していく必要性が説明されました。
農林水産業者や流通業者等が連携をしていく上で、互いの商品や市場、契約の遂行に対する意識に違いがあり、その違いを相互に理解し、互いの強みを活かした連携を図るために、コーディネーターが必要であることが述べられました。 コーディネーターに必要とされる役割としては、「事業計画の構想」、「連携体の構築」、「事業の企画提案」、「連携体の運営能力」、「課題の解決」といった事業化の各段階で、中心となり活躍することが挙げられました。
各段階での具体的な注意点とそれに対する対策も述べられました。たとえば、「事業計画の構想」の場合は、何処に誰があるいは何があるのかといった上人材の情報を持つとともに、補助事業等の事業計画を推進する上で必要な資金を獲得するための補助事業等の情報をいかに早く多く集めるかということが述べられました。
講義では、まず本研修の目的として、農商工連携を進める上で「中核となる人」、すなわち単なる関係者を紹介するだけのアドバイザーとは異なり、ともに課題解決に取組み、関係する各分野との連携を図り、フォローし、連携を創り上げていく「コーディネーター」を育成することであることの説明が行われました。
さらに、このコーディネーターには、地域における食農の現状及びその地域を取巻く周辺の概況を理解し、戦略的な視点のもと、連携構築の推進に向けた活動をする必要があることが、各地域の農商工連携をテーマとした取組みモデルを示しながらわかりやすく説明されました。
その上で、連携を構築し、継続していくためには、先ず関係者による合意形成が行われ、そこから出た地域ポテンシャルを活用するために、「いつ・誰が・何をするのか」という具体的な戦略をつくっていくことが重要であること、その戦略構築、合意形成手法の一つとして、SWOT分析があることの説明がなされました。さらに、具体的にSWOT分析を用いた食農連携の戦略構築・合意形成をどのように行うべきかについて、内部環境の強み(S)、弱み(W)、外部環境の機会(O)、脅威(T)の抽出の仕方、各々の項目を関連付けて、戦略に落とし込んでいく方法等が、わかりやすく解説されました。
実践研修では、「山口県の食料産業」をテーマとして、各グループごとに強み(S)、弱み(W)、機会(O)、脅威(T)について話し合い、整理をしました。研修参加者は、常日頃から主に山口県内でのコーディネート業務に主体的に携わっている方を中心として、食料産業の各分野の方々が多くいらっしゃいました。山口県食料産業の主力のひとつである水産物や歴史的強みを活かした観光産業との融合や、山口県の地理的な要素などの、内部環境に重点を置いた検討が行われました。各グループの検討結果の報告に対しては、講師より、全体的な視野にたって外部環境を検討するために、市場・流通問題を専門に調査・研究している外部の有識者を招待してSWOT分析を行うこともであるとの提案がありました。